MLS のオーナーを追う!~Seattle Sounders FC ポール・アレン氏(後編)~

 アレン氏は、マイクロソフトを退いた後もその株を100億ドル以上所有しており、その資産はマイクロソフトの成長と共により豊かなものとなっていきました。そしてマイクロソフトの退社から3年後の1986年、アレン氏は妹のジョディーと共に投資会社「Valcan Inc.」を設立します。ここでアレン氏が着眼点を置いた先の一つにスポーツチームがありました。

 Valcan Inc. の設立からわずか2年後の1988年、アレン氏はNBAチームのPortland Trail Blazersを当時70億ドルで買収し、同時にBlazersの本拠地であるRose Gardenの改築にも手を差し伸べます。Portland Trail Blazersは、アレン氏の買収時には70億ドルの価値しかありませんでしたが、2014年時には587億ドルの価値がつけられ、NBAに所属する30チームのうち12番目に価値のあるチームとなりました。

 アレン氏のスポーツ界進出はまだ終わりません。1997年には、当時南カリフォルニアへのクラブ移転危機にあったNFLクラブのSeattle Seahawksを、200億ドルで買収します。

  アレン氏のこの行動は、地元からNFLクラブがなくなる事に猛反発をしていたシアトル市民の心をぐっと掴む結果となり、アレン氏の買収時には経営難に陥っていたクラブも、2005年、2013年、2014年とNFLのチャンピオンシップであるスーパーボールへの進出を果たします。Seattle Seahawksには、2014年時点で1.33ビリオンドルもの価値が付けられ、チーム価値の高さは世界の全スポーツクラブの中で28位にランクインしています。(ちなみに世界一チーム価値の高いクラブは、スペインのサッカークラブReal Madridで、そのチーム価値は3.44ビリオンドルにも及びます。)

 さらにアレン氏は2009年、地元シアトルに新しく設立されたMLSサッカークラブのSeattle Sounders FCの共同オーナーに就任します。Seattle Sounders FCの人気は瞬く間に浸透し、クラブ初年度を迎えた2009年時には、クラブの全ホームゲームチケットが完売。クラブの一試合あたりの平均観客動員数も、クラブ設立時から5年連続で3万人以上を記録するほど、アメリカサッカー界で圧倒的な人気を誇ります。

 

 アレン氏のこれほどまでの成功はどこから来ているのでしょうか。その鍵を握るのは、アレン氏の多大なる慈善心だと筆者は考えます。

 アレン氏はこれまで、約1.5ビリオンドル(約1.500億円以上)もの資産を、世界の恵まれない方々への援助・寄付金として使用してきました。2014年10月には、エボラウイルスに侵され苦しむ西アフリカの人々への援助金として、100億ドルの寄付も行ってます。

 

 「我々は今、エボラウイルスという大きな課題に直面しており、それが西アフリカで深刻な問題となっている現状も知っている。全世界をネット上でつなげる事に成功した今、それが慈善事業の促進につながればと思う。」(参考:ESPN.com)

 

 アレン氏は自身のツイッターやメディエアを通し、世界中に、エボラで苦しむ人々の現状を伝えると共に、資金援助も募っています。リーダーとなる人間が先頭に立ち、行動する事で指針を示す。アレン氏こそ、世界を変える人間のあるべき姿であります。