MLSをも凌ぐ勢い!? 2部NASLの企てる世界一の組織作りに向けた次なる策略とは?

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 MLSと共にアメリカサッカーの人気リーグとして確立している2部NASL(National American Soccer League)。NASLは今日、アメリカ東海岸を中心に11のクラブから構成されており、MLSとの昇/降格のない、単独リーグとして存在しています。日本では、アメリカサッカーといえば1部MLSが主流として知られていますが、実はこの2部NASLにもファンは着々と定着しており、その急成長ぶりはMLSをも凌ぐ勢いすら感じさせます。そんなNASLのリーグコミッショナーであるBill Peterson氏は8月12日、NASLの近未来構想について発表しました。

Photo: NASL
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「アメリカサッカーリーグ世界一への挑戦。そのために昇/降格 システムを導入する。」

(NASLコミッショナー、Bill Peterson)

 今日、世界のどのサッカーリーグを見ても、リーグ間の昇/降格システムは採用しており、その例外はアメリカのみとなっています。リーグ間の昇/降格システムを採用することのメリットとしては、競争意識により試合の付加価値が向上する点です。地方から誕生した小さな街クラブでも勝利を積み重ねることで、上位リーグに所属する歴史ある有名クラブとの試合が実現し、さらに国のトップにたてるチャンスが期待できるとなれば、自然と選手とファンの試合に対する熱も変わってきます。さらに、上位リーグで戦うことによりクラブにもたらされる経済効果も、昇/降格システムのメリットの一つであります。


 昇/降格システムによる経済効果は、日本のJリーグからも見てとれます。2015年にJ3からJ2へ昇格したツエーゲン金沢の観客動員数を見てみましょう。日本の3部サッカーリーグとされるJ3で戦った2014年のツエーゲン金沢の1試合あたりの平均観客動員数は3,440人でしたが、2部リーグであるJ2での戦いとなった2015年の1試合あたりの平均動員観客数は4,393人と、上位リーグへの昇格を果たしたことで観客動員数は約1,000人近くも増加しています。これは、ツエーゲン金沢のファンが増えた事も理由の一つにありますが、対戦相手のチームにつくファンの数も影響しているでしょう。歴史ある日本の有名クラブの一つとして知られるガンバ大阪が2013年にJ2へ降格した際に、次々と対戦相手のホーム試合時の最多観客動員数記録を塗り替えていったのは有名な話です。NASLのBill Peterson氏は、昇/降格システムの導入こそ、アメリカサッカーリーグの世界一に必要な要素と考えます。

Photo: 金沢の地域ブログポータルサイト『金沢ブログ』
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MLSのコミッショナーであるDon Garber氏。   Photo: New York Times
MLSのコミッショナーであるDon Garber氏。   Photo: New York Times

 しかし、このPeterson氏の意見に対し「NBAやNFLは昇/降格システムを用いずに、それぞれ世界一のリーグとして認知されている。(Peterson氏の意見は)一切意味を成さない」と話すのが、1部MLSのコミッショナーであるDon Garber氏です。確かに近年のMLSは、カカ選手やピルロ選手の移籍やデビット・ベッカム氏のクラブ設立計画に見ても、それ単体でも世界一を狙えるポテンシャルを十分に兼ね備えていると言えるでしょう。さらにGarber氏のこの発言の裏には、MLSが既にアメリカサッカーリーグ3部USLや、4部PDLを手中に収めているという自身からも来ているのではと推測します。NASLを邪魔者として敵対視するMLSの姿勢からは、NASLの勢いに恐れを感じているようにも思います。

 MLSからの協力が期待できないNASLが目をつけたのが、PDLと同じくアメリカサッカーリーグの4部に位置するNPSL(National Premier Soccer League)です。NPSLは、そのサッカーレベルこそは高くないものの、全米に68ものチームを持つほど大きな勢力を持つリーグです。NASLは、このNPSLと手を取り合うことで、MLSを抑え、アメリカのトップリーグとして世界一を目指す組織作りを企てたのです。

 このような状況において、他力本願にはならず、自らのリーグの成長にも余力を残さないのがNASLです。現在11のチームで構成されるNASLも、来年2016年には新たに2チームを加えます。注目すべきは、新たに参入する2チームのオーナー達です。フロリダ州マイアミからの参入となるMiami FCのオーナーを務めるのは、かつてイタリア史上最高のサイドバックと評された、元イタリア代表のパオロ・マルディーニ氏です。サッカー界の知名度で言えば、MLSのカカ選手やビジャ選手とさほど変わりはないでしょう。そして、プエルトリコ島北部のバヤモンからの参入となるPuerto Rico Bayamon FCのオーナーを務めるのが、現在NBAのNew York Knicksに所属し、過去2度に渡り米国代表のオリンピック金メダル獲得に貢献した、カーメル・アンソニー選手です。違う畑での挑戦となるカーメル・アンソニー選手の胸には、プエルトリコ島に活力を与えたい気持ちが強いようです。

2016 年にNASLへの参入が決定したMiami FCのオーナーを務めるパオロ・マルディーニ氏。Photo: NASL
2016 年にNASLへの参入が決定したMiami FCのオーナーを務めるパオロ・マルディーニ氏。Photo: NASL
2016年にNASLへの参入が決定したPuerto Rico Bayamon FCのオーナーを務めるカーメル・アンソニー氏。Photo: MARCA.com
2016年にNASLへの参入が決定したPuerto Rico Bayamon FCのオーナーを務めるカーメル・アンソニー氏。Photo: MARCA.com

 NASLにはこの他にも、かつてブラジル代表のフォワードとして活躍し、世界的な知名度の高いロナウド氏も、フロリダ州フォートローダーデールに本拠地を置くFort Lauderdale Strikersの共同オーナーとして就任しており、ニューヨーク州ヘムステッドに本拠地を置くNew York Cosmonには、かつてレアル・マドリードの象徴と呼ばれたラウル・ゴンザレス選手が所属しており、それぞれNASLの成長に貢献しています。世界一の組織作成計画を打ち立てたNASLの今後に注目です。

Photo: by Noah K. Murray/ USA Today Sports
Photo: by Noah K. Murray/ USA Today Sports
Photo: Dirty Tackle
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