米サッカーリーグに存在する2つの4部リーグの異なる価値

 米国でプロサッカー選手を目指す選手であれば必ず押さえておくべきリーグが2つ存在する。それはプレミア・ディベロップメント・リーグ(通称PDL。以下PDL)と、ナショナル・プレミア・サッカーリーグ(通称NPSL。以下NPSL)だ。前者PDLは、当コラムの読者であれば馴染み深いものであると思う。しかし後者NPSLは、当コラムであまり紹介していないこともあり、その知識は乏しいはずだ。PDLとNPSLは異なるリーグでありながら、それぞれ米4部サッカーリーグに位置するという共通項がある。しかし、だからといって、この両リーグが米サッカー界で同じ役割を担っていると解釈する人がいるが、その本質はまるで違う。プロを目指す学生選手にとっては、この解釈のずれが時間と費用の浪費に繋がることもある。実際、過去にもそのような学生選手は存在した。今回は、現役大学生を主体に、米4部サッカーリーグとして夏期に開催される2つの4部リーグ「PDL」と「NPSL」の、異なる存在価値に迫る。

Photo: http://www.kwunitedfc.com/ 
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Photo: histoire.maillots.free. 
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学生選手の異なる参加目的

プロを目指すためのPDLと、夏期にプレー環境を確保するためのNPSL

 1995年に創設されたPDLに比べ、NPSLが創設されたのは2003年のこと。現在、全米各地から60以上のチームが加盟するまでに成長した両リーグだが、そこに参加する学生選手達がそれぞれのリーグに求めるニーズや認識は根本的に違う。ここ最近の記事では何度も紹介していることだが、PDLは1部MLSや3部USLとの直接的な太いパイプが存在しており、MLSスーパードラフトにおいてPDLでプレーした選手が指名される確率は極めて高い(2015年のMLSスーパードラフトでは指名された選手の実に70%がPDLでプレーした実績を持っていた。)。しかし、これは当たり前といえば当たり前である。というのも、MLSのクラブはPDLにセカンドチーム(下部組織)を置くことで、クラブの若手選手を育成することは去ることながら、対戦相手の有望若手選手達のスカウティングも同時に行っているからだ。もちろん、PDLで抜きんでた選手の情報は直ぐにMLSや3部USLへ回っていく。PDLに参加する学生選手も、これらの事情を理解した上でPDLでのプレーを懇願する。なのでPDLに参加してくる学生は、大学年代最高峰リーグとなるNCAAディビジョン1やディビジョン2で活躍する選手が多い。PDLのブランド力を高めたい運営組織のUSL(ユナイテッド・サッカーリーグ)も、選手のプロモーション活動には努力を払うため、プロ入りを目指す学生選手にとっては、これ以上にないルートが用意されている。それがPDLだ。

同じ運営組織であるが故に実現する、3部USLクラブと4部PDLクラブのエキシビジョンマッチ。2015年のLAギャラクシー2(3部USL)とフレズノ・フエゴ(4部PDL)によるエキシビジョンマッチより。Photo: LA Galaxy 公式ウェブサイト
同じ運営組織であるが故に実現する、3部USLクラブと4部PDLクラブのエキシビジョンマッチ。2015年のLAギャラクシー2(3部USL)とフレズノ・フエゴ(4部PDL)によるエキシビジョンマッチより。Photo: LA Galaxy 公式ウェブサイト

 一方、学生選手の一番の魅力ともなるMLSとの太いパイプ確立という面で、PDLに完全に遅れをとったNPSLが、リーグ存続に必要な存在意義として定めたのが、「誰でも参加できるリーグ」だった。NPSLは、リーグへの加盟金や1チームあたりの年間クラブ運営費をPDLより大幅に下げることで、多くの地域で比較的低コストでサッカークラブを運営できる環境を整え、尚且つ、夏期のプレー環境を求める選手であれば誰でも参加できる環境をも構築した。そのため、PDLクラブへの入団が叶わなかった選手でも、とりあえず夏期もプレー環境を確保するためにNPSLに参加する。しかし、NCAAディビジョン1やディビジョン2で活躍する選手にとってはその高いプライドが邪魔するせいか、NPSLに参加する選手にはNCAAとは別の組織にあたるNAIAに所属する大学や、二年制大学でプレーする選手が目立ち、NCAAで活躍する選手というのは、あまり見かけない。

 

 米国でプロを目指す選手であれば、お金を払ってでも参加したいのがPDLで、とにかく夏もサッカーを楽しみたい選手のために存在するのがNPSL。ヒルトンホテルとルートインホテルが、それぞれ異なるニーズのもと併存しているのと近いものがある。

2010年から2014年までNPSLに所属していた1部MLSのニューヨーク・レッドブルズの下部組織となるニューヨーク・レッドブルズU23も、2015年からはプレーの場をPDLに切り替えた。Photo: ニューヨーク・レッドブルズ公式ウェブサイト
2010年から2014年までNPSLに所属していた1部MLSのニューヨーク・レッドブルズの下部組織となるニューヨーク・レッドブルズU23も、2015年からはプレーの場をPDLに切り替えた。Photo: ニューヨーク・レッドブルズ公式ウェブサイト
  PDL NPSL
創設 1995年 2003年
開催時期 5月初旬-8月初旬 3月下旬-7月下旬
参加学生の主な所属大学リーグ NCAAディビジョン1、ディビジョン2 NAIA、二年制大学  
加盟チーム数 63 68
MLSのセカンドチーム数 7 0
MLSの傘下に入るチーム数 3 0
リーグ加盟金 500万円~ 125万円~
年間リーグ参加費 90万円~ 60万円~
年間クラブ運営費 1,300万円-2,000万円 430万円ー500万円

NPSLにもプロリーグとのパイプが構築される?

その存在価値に変革が訪れる可能性も

 4部NPSLもプロリーグとの繋がりがない訳ではない。2015年には、米2部サッカーリーグにあたるNASLに所属するニューヨーク・コスモスが、クラブの下部組織を4部NPSLに設立した。これは、どちらかと言えば2部NASLが仕掛けた戦略との見方ができる。2部NASLは近年、元スペイン代表のラウル選手といった世界の元スーパースターをリーグに招き、ファンの注目を引こうと奮闘している。しかし、その存在は未だMLSの陰に隠れているのも事実だ。


 2部NASLは、MLSの着実な発展の要素に、3部USLや4部PDLなどの他リーグとの提携が関係していると考えた。そこで2部NASLが目をつけたのが、未だどのリーグとも強い繋がりをみせない、4部NPSLだったのだ。2部NASLは4部NPSLとの提携の第一歩として、今年2015年の8月には、4部NPSLとの間に昇格・降格システムを設けるとの近未来構想も公表している。これが実現すれば、4部NPSLは、2部NASLに価値を見出す学生選手を取り込んでいくことも可能となるだろう。そうすることで、現時点では夏にプレーの場を提供するだけに過ぎないNPSLも、PDLのように、プロリーグとの太いパイプを活かした「プロへの登竜門リーグ」へと変革を遂げていけるようになるかもしれない。


 PDLとNPSL。2つの4部リーグの存在価値は、その勢力の違いによってやむを得なく異なる方向に行ってしまったのかもしれない。しかしそれも、新たな巨大組織が興味を示すまでに成長したことで、望んでいた方向に舵を取れる状態にまで差し掛かっている。それぞれのリーグがセットする最終ゴールは定かではないが、これらの併存が最終的に学生や世のためになることを願い、それぞれの今後の動向に注目していきたい。

2部NASLは4部NPSLと提携を締結することで、米サッカー界のトップをひた走るMLSの背中を追う。
2部NASLは4部NPSLと提携を締結することで、米サッカー界のトップをひた走るMLSの背中を追う。

提携機関

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