MLSドラフトで日本人留学生が1位指名。「ドーハの歓喜」の裏で光る米サッカー界の強かさ。

トロントFCより1位指名を受けた遠藤翼君 Photo: MLS
トロントFCより1位指名を受けた遠藤翼君 Photo: MLS

 日本時間の1月26日、男子サッカー日本代表U-23は、ドーハで開催されたU-23アジア選手権の準決勝に臨み、2−1でイラクを撃破、リオ五輪出場を決めた。アメリカW杯への出場を逃した「ドーハの悲劇」として知られる1993年のアジア最終予選最終戦と同じ場所、同じ組み合わせの対戦であっただけに、今回の勝利に日本列島は一際湧いた。

 6大会連続、10回目のオリンピック出場を決めたU-23日本代表だったが、わずか二週間前には、彼らと同年代の選手がアメリカ中にその名を轟かせていた。

・留学生がドラフト一位指名
 遠藤翼、22歳。マリーランド大学に在籍する、日本人留学生である。1月14日に開催されたMLSドラフトでトロントFCからドラフト一位指名を受け、一躍スポットライトを浴びた。ドラフト当日には、遠藤の母親も会場に駆けつけ、一位指名の喜びを分かち合った。
 日本人初のドラフト一位指名選手として脚光をあびている遠藤だが、彼のアメリカ生活は英語学校から始まった。渡米直後はほとんど英語が話せなかったという彼は、大学付属の英語学校に一年間通い、大学入学の切符を手にする。留学当初は食べ物や文化にも適応できず、MLSのインタビューでは、「人生で最も困難な時期だった」と振り返っている。遠藤は、一位指名を受けたトロントに入団予定だが、この春には社会学の学位でメリーランド大学を無事に卒業する。MLSチームからのドラフト一位指名は、スポーツ留学生としてもがき続けた4年間の末に得た結果だったのだ。

 バスケットボール界では、ジョージ・ワシントン大学に留学している渡邊雄太のNBAドラフトでの指名に期待が掛かっている。英語の壁を克服できずにバスケ留学を志半ばで断念する留学生が多い中、渡邊は渡米後、プレップ・スクールで十分な英語力を身につけ、ジョージ・ワシントン大学への入学を決めている。遠藤も渡邊も、スポーツ留学を成功させる上で欠かすことのできない英語力の取得を優先的に考え、行動したのである。

NBAドラフトへの指名が期待される渡邊雄太君 Photo: Japan Times
NBAドラフトへの指名が期待される渡邊雄太君 Photo: Japan Times

・アメリカの強さ
 アメリカのビッグリーグから留学生がドラフト一位指名を受ける、これはとてつもない快挙である。しかし、冒頭に紹介したU-23日本代表メンバーに、彼の名前が入っていないことにお気づきだろうか。
 トロントFCのライアン・ネルソン監督は、「何度もマリーランド大学の試合に足を運んだ」と述べ、留学生である遠藤のプレーを何度も偵察に訪れていたことを明らかにした。昨年末にはMLSバンクーバー・ホワイトキャップスが柏レイソルの工藤壮人の獲得を発表し、日米のサッカーファンを驚かせた。SDSAが福岡で開催したショーケースでは、米国大学の男子サッカー部コーチ3名が留学生候補の視察を行い、兵庫で開催された全日本高校女子サッカー選手権大会には、NCAAディビジョン1の大学から女子サッカー部コーチ2名が視察に訪れた。先日SDSAが設立を発表したSan Diego Zest FCのコーチ陣には、トルコ系、アイルランド系の面々が並ぶ。アメリカサッカー界は常に世界を捉えているのだ。多様性を重んじ、世界中から人材を確保してきたアメリカという国の懐の深さと、それに牽引される「強さ」は、サッカー界においても大いに発揮されているのである。

 

 日本サッカー協会は、遠藤がU-23の代表から漏れていることについて、遠藤は「ノーマーク」であったことを認め、アメリカの大学にもスカウトのネットワークを拡げていくことを示唆した。アメリカの大学ではスポーツ留学生へ向けた潤沢な奨学金が用意されており、高度な教育を受けるために優秀なアスリートが集まる。そして、大学のコーチやプロのスカウトは、そうした意欲のある学生選手を見逃さない。

 「やるべきこと」を見失わなかった学生選手の努力と、それを見逃さないプロの「眼」が、今日もアメリカのスポーツ界を支えている。

提携機関

アメリカ総合留学